臆病者で何が悪い!
日曜の夜。適当に作った夕飯を食べ終えて、ただテレビをみているところだった。
チャラチャラチャラチャラ~♪
スマホから着信音が鳴り響く。アラームと着信音で音を変えないと――。そんなことを思いながらスマホに手を伸ばした。
ディスプレイに表示されていたのは、生田眞【職場 同期】という名称。
電話帳のグループ名をそのまま表している。これだけを見ると、この人が恋人になっただなんて到底思えない。
(もしもし。今、大丈夫?)
「はい。大丈夫です」
こうして電話がかかって来て声を聞けば、これが現実なのだと思うけれど。
(あれから、二日酔いになったりしなかったか?)
「ああ、うん。今回は大丈夫だった。あんなに長い時間居酒屋にいたから相当飲んだんだろうと思ったけど、実際は、喋りながらだったから良かったのかもね」
開店とほぼ同時にあの店に入った。計算してみると、恐ろしい時間滞在していたことになる。
(なるほどな。確かに。あんなに喋ったの初めてで、今朝少し声が掠れてた)
そう言って生田が笑う。こうして用件もないのに電話がかかってくることが、付き合っていることの証拠なんだろう。客観的に考えれば分かることも、いざ自分のことに置き換えると途端に分からなくなる。
生田から電話がかかって来たことで、重要でかつ気が重いことを思い出してしまった。
「あの……」
(ん?)
「私と、その、生田は、付き合うことになったんだよね?」
(そうだな)
「それを、職場の人に知られるのは、ちょっとどうかと思うの。同じ省内でも課が違うならまだしも、今なんて同じ課でしょう? 仕事もやりづらいし、他の人もやりづらいだろうし。私も、そういう視線とか慣れていないので」
そんな経験ないので、おそらく、とんでもなく不自然極まりない行動をとる。
それに、自分自身ですらうまく消化できていない関係を、他人にあれやこれやと言われることが耐えられない。
「生田だって、嫌でしょ? 周囲からいろいろ言われるの」
むしろ、私より生田の方が「なんで内野なんだ!」って言われそうだ。
「――生田?」
私の言葉に生田が無言になる。それが不安になった。何か、気に障るようなことを言っただろうか。