臆病者で何が悪い!


余すところなく綺麗に鍋をたいらげた。

することがなくなった私は、またまた何かから逃れるように生田の部屋の本棚をまじまじと見つめ、必要以上にはしゃいでみせる。

「なんか、英語の本と難しそうな法律の本ばっかりだ。見られたら困るようなものはなさそう」

整然と並べられているのは、雑誌でもなく漫画でもなく、お堅いタイトルのものばかりだった。どっかの誰かさんの本棚とは大違いだ。

「バーカ」

つい食い入るように本棚を見ていると、背後から私の頭を軽く叩かれた。

「そんなもの、本棚に並べるバカがどこにいる」

「っていうことは、やっぱり生田も持ってるんだ?」

私がニヤニヤとした顔で聞いてみると、また叩かれた。

「そんなこと聞いてると、自分の首を絞めるぞ」

うっ――。

墓穴を掘るところだった。どうして私は、つい茶化しちゃうんだろう。いつもこうやって汚れ役を買っているから、その時の癖がこういう時にも出てしまうんだ。焦った私が、すかさず話題を変えようとした時、生田が不意に私を背中から抱きしめて来た。




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