臆病者で何が悪い!
それでも、私が、可愛かったり、美人だったり、雰囲気がよかったり、優しかったりするのなら、異性として見ることもあるだろう。
でも、私だよ――?
桐島にだって、遠山にだって、『もっと女らしくしろ』とか『他の女の子には気を使えるけどおまえには出来ない』とか言われるような女だよ――?
それで、どうして生田だけが違うなんてことがある――?
原因と結果がまったく結びつかない。
考えても考えても、どんどん分からなくなる――。
そんな曖昧なものにすがりつくようなこと、もうしたくない。
『悪いけど、もう部屋とか来ないでね。電話もしないで。俺、彼女が出来たから』
思わず両耳を手で塞ぐ。私を骨抜きにしておいて、突然突き放す。おまえは、特別なんかじゃない。ただの「性別”女”」なだけの人間。
『ちょっと女扱いしてやったら、いちころだった』
『顔はともかく、いい身体してるから。やりたい時にヤれればいい。そんな関係』
そう言い放った、達也の冷たい背中。
どうして、達也のことばかり思い出すのだろう。あの声が胸にべったりと張り付いて、剥がれない。
布団の中で必死にうずくまる。
蘇るあの顔、声、肌の感触。生々しい記憶を掻き消したくて、必死に耳を塞ぎ目を閉じる。でも、そうして訪れた暗闇が私を闇へ闇へと引きずり込む。