臆病者で何が悪い!


「い、生田」

ぎこちなく声を掛ける。同期として、同じ課の同僚として、不自然にならないように。そんなことばかりを考えていたら、余計に表情が硬くなった。

「……ああ」

私から一瞬目を逸らした後、そのまま私の横をすり抜けて行く。

「あっちに他の同期もいるよ」

私の顔を見ることなくそう言って。その声は、本当に以前の生田のようで。ただの同期としての振る舞いだった。

「うん。分かった……」

そして、その視線を田崎さんに移し軽く会釈をすると、私と田崎さんを残して生田は会場の中へと消えて行った。

「じゃあ、僕たちも行こうか?」

田崎さんの声が間近で聞こえる。

「あ、は、はいっ」

つい生田の背中を見つめてしまっていた。そこに田崎さんがいるということがすっかり頭から消え去っていた。
自分が望んでいることなのに。生田が他人のような目で私を見たことに、胸がチクっと痛くなった。それは、私が思っていた以上にずっと強い痛みだった。
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