臆病者で何が悪い!


「待ってたぞ!」

歓声があがる。それ以上無理ってほどの笑顔の遠山と、はにかんだように微笑んでいる新婦。二人の周りには後光でも射しているかのようにきらめいていた。

「みんな。今日はありがとうな」

「よっ、この幸せ者!」

私たち同期のいる場所に遠山カップルが来てくれた。遠山の隣に立つ女性は、柔らかな雰囲気の可愛らしい女性だった。

「このたびは、おめでとうございます」

「ありがとうございます」

すごく幸せそうな笑顔をした彼女は、遠山のことを本当に愛しているんだと分かる。

「めちゃくちゃ幸せそうだよ。遠山にはもったいないくらい綺麗な奥さん。大事にしなきゃね」

私がそう言うと、遠山が「あたりまえだろ」と即答して来た。

「田崎さんっ。今日は、二次会にまで来ていただき、ありがとうございました!」

突然、姿勢を正し、遠山が田崎さんに頭を下げる。どれだけ、世話になっているのだろう。態度が違い過ぎる。

「大丈夫だよ。生田は全然相してくれなかったけど、内野さんがいるから」

そう言って田崎さんが視線をどこかへと向ける。その視線の先には、戻って来ていた生田がいた。

「おい、こら、生田! 飯塚さん今日来られないんだから、おまえちゃんと田崎さんの世話しろって言っておいただろ」

遠山がやんやと生田にわめいても、生田は表情一つ変えなかった。

「俺の世話が必要なようには見えませんけど。十分楽しんでいるかと」

「……確かにそうだな。生田と話しているより、内野さんと話している方が楽しいに決まってるか」

田崎さんがにこりと微笑む。

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