臆病者で何が悪い!



とにかく必死だった。必死にしがみついていた。生田の手のひらが熱い。肩が剥き出しのワンピースは、心許なくて。

「あ、あの、私のシャワーは?」

「ん……。必要ない、って言うか、もう待てない」

生田の手は緩まない。

「い、くた――んっ」

深いキスに息が止まる。深くて激しいのに、私に触れる手のひらは優しい。だから、もうどうしていいのか。ただ懸命に呼吸するのに精いっぱいで。ぎゅっと生田のTシャツを握りしめる。

「沙都……」

私を見下ろすその目は、熱がこもって見つめただけで胸が疼く、激しい目。

「好きだ。沙都」

初めて、名前で呼ばれた。体温が上がってしまう。こんなの、全部バレてしまうーー。

「沙都――」

何度も名前を呼ばれて、肩から落ちて行くワンピースと一緒に、素肌に生田の濡れた髪が滑り落ちて行く。優しい声と熱い吐息が私を蕩けさせて。身体を繋げることは快楽を得ることだけが目的じゃないって、初めて思えた。気持ちを伝えあうことなんだと。それだけ、生田は何度も何度もキスをして、どこもかしこも恥ずかしくなるほどに優しく触れて――。

こんなに優しく抱かれたことなくて、嫌になるほど泣いてしまった。

「沙都……?」

心配そうに私を見つめるから、余計に泣ける。

「胸がいっぱいで勝手に涙が出る」

「沙都……」

生田が私をきつく抱きしめた。

「そんなこと、言われたら……。もう、我慢出来なくなる――」

「我慢なんて、しないで」

生田の胸の中で何度もそう言っていた。

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