臆病者で何が悪い!
週が明けて、月曜日――。目覚めた私に、真っ先に緊張が走る。
大丈夫、かな、私。普通に振舞えるかな。
生田と初めてキスした時よりも。生田と付き合うことになった時よりも。その何倍も緊張する。
どうしてだろう。肌を重ねてあれだけいろいろ曝け出し合ったはずなのに、一たび日常に戻ったらなんとなく振り出しに戻る感覚になる。近くなったからこそ、恥ずかしい。
顔をパンパンと二度たたく。仕事だ仕事。気合を入れて、ベッドから這い出た。
「おはようございます……」
語尾が小さくなってしまった。いつもより早めに職場に到着する。おそるおそる課へと足を踏み入れると、部屋は怖いほどに静かだった。
鍵は開いているから一人目ではないはずなんだけど……。
室内を進み自分の席へと向かう。私の席の背向かい、生田は既に出勤していた。
「お、おはよ」
早速声が上擦る。
「ああ、おはよ」
それに反して、生田はいつも通りのクールフェイス。さすが生田だ。私も、落ち着け。自分の席に着き、一度深呼吸をする。ダメだ、姿を見ただけでこれだけ心臓の動きが早くなるなんて。目に毒。生田は、目に毒だ。よし。
「これ、見といて」
「わっ」
落ち着いたと思ったところに、生田の声が近くでして身体が反応してしまった。
「どうした?」
「どうもしないです。これね。はい、見ておきます」
生田の手にある資料を受け取る。その時、資料を持つ生田の指が目に入って、またいらぬことを意識する。資料だよ、資料!
「ぷっ。分かりやす過ぎるほどに分かりやすいな」
「な、何よっ!」
一人あたふたとしている私に生田が笑いを漏らす。
笑われてる……。
恥ずかしい。恥ずかしい。とりあえず、生田を意識から消そう。
「おはよう」
そこに、田崎さんの声が入り込んで来た。