臆病者で何が悪い!
「でも、生田のお姉さん、ちょっと会ってみたい……かも?」
沙都がふふっと笑う。
「そうかぁ?」
まあ、確かに――。
いずれ、
姉はともかく俺の家族に会わせる日も来るか――。
少し、先走り過ぎか。
でも……。
「なあ、沙都」
「ん?」
横たわる沙都の顔が俺を見つめる。
「年末年始って、どういう予定になってる?」
「私は、はっきりとは決まってないよ。実家って言っても同じ東京だし、ふらっと行って帰って来る感じかな……。生田は?」
「俺は、実家には年に一回、冬しか帰らないからな。帰省しないとうるさい」
俺と親子とは思えないうるさい両親の顔が浮かぶ。
「そっか……」
少し俯き気味になった沙都の表情を見逃したりはしない。
「なに、寂しいの?」
「……うん」
こうして素直に応えてくれることが増えて。ああ、本当に恋人同士になったんだな、などと実感したりする。
「俺も」
一日たりとて離れていたくないーーなどと思う俺もかなり重症だ。
こんなにも人と一緒に過ごしたいという欲求にかられるのは初めてかもしれない。
「じゃあ、俺の実家来る?」
「えっ!」
沙都が突然起き上がったから、布団がめくれてしまった。
「迷惑じゃ……」
「そう思うならこんなこと言いださないよ。来る……?」
俺の家族はそれぞれ皆ひとクセある連中で。むしろ沙都の方が迷惑かもしれないが、それでもいつかは会うことになるのなら早く会わせておくのもいいかもしれない。
「うん」
沙都が勢いよく頷いてくれた。
行ってもいいと思ってくれたということかーー。
その気持ちがなんだか嬉しい。
「よし。じゃあ親に伝えておく。ただ、俺の家族見て、ちょっと驚くかもしれないけど……」
「そんなことないでしょ。生田の両親でしょ? 立派に決まってるよー」
いや、そんなことはない――。
沙都の声がどことなく弾んでいるような気がするのは、気のせいか。
俺が、軽い気持ちで付き合っているわけじゃないということが伝わるだろうか。
「沙都――」
目の前の存在を、誰より大切にしたい。
俺の力で、少しでいいから自分に自信を持てるようにしてやりたい。
こんなにも愛されている女なんだって実感させたい――。
「好きだ」
その身体をきつく抱きしめて、唇を重ねる。
幸せな気持ちで一杯にしたい。
もう、哀しい涙は流させたくない――。
だから。
俺だけを見て。俺を信じて。
俺を、愛して――。
他の誰でもない。俺だけを。
何があっても、離れて行かないで。
どんなことがあっても、俺といることを選んで――。
触れた先から温もりが伝わる。
この温もりをこの先もずっと感じていたい。
二人で笑い合っていたい。
俺にとって唯一無二の人だから。
こんなにも愛せる人は、おまえしかいないから――。