臆病者で何が悪い!
それからは、もう恋なんて浮ついた物をしないようにした。
高校に入ってからは、一応共学だったけれど、異性に興味も関心も向けずにいたら、本当に気になる人すら現れなかった。
女子とばかりつるんでは騒いでいた三年間は、もともとなかった女子力というものを地に落とさせて。それでもなんの支障もなかった。ティーンエイジャーならではの輝きもときめきも私にはいらない。
また自分というものを忘れておかしなことをして傷付くくらいなら、この平穏な生活の方がよっぽどいい。中学のイタイ失恋から、あの痛みを忘れないように懸命に生きていたのに。
バカな私は、大学時代、もっともっとイタイ思いをする。人間っていうものは哀しいほど忘れて行く生き物で。
あんなに自分に言いつけていたのに、私はまたも馬鹿なことをしてしまった。
でも、そのことまで振り返るのはやめておく。私の人生で真っ黒に輝く黒歴史、二度の失恋を一度に思い出すほどの心の強さはない。
中学時代のも相当にイタかったけれど、その比じゃない傷だもの。本当ならもうあまり触れたくないくらいだ。
それなのに、また恋なんてしてしまったら――。
『バカ』の二文字じゃ済まされない。三度同じことをしたら、それはもう、愚かだ。
大人になった分だけ、きっとその傷も深くなる。
だから――。
「私は、むやみやたらに恋なんかしませんよー」
そう希にはっきりと言うことで、もう一度自分の心を引き締めた。