臆病者で何が悪い!
「――ううん。おまえの言葉を信じるよ。俺は、おまえを信じたい。だから……」
肩を掴む生田の手のひらに力が入る。
「もし、もし何か困ったことがあったら、何か苦しむようなことがあったら、なんでも俺に言ってほしい」
久しぶりにこうして間近で生田の顔を見た。その顔は、とても疲れて見えた。久しぶりだということは、それだけ生田と会っていなかったということだ。もう一度強く抱きしめられる。
――ねぇ、伝えさせてよ。苦しめた分だけ分からせたい。
「――せっかく久しぶりに会えたのに、俺がぶち壊した」
私は頭を振る。そして、言葉の代わりに唇で生田の身体に触れる。コートを着たままの身体はどこもかしこも分厚い布で覆われているから、首筋に唇を這わせる。
「……おい、無理しなくて、いい……から」
「今日は、私が、したい」
「何言って……、待て――」
「もう、黙って」
生田がまだすべてを言い終わらないうちに唇を塞いだ。
「……バカだな、おまえは。今日の俺はまともじゃないって、分かってるだろ」
しがみつくようにキスをした私の頬を力づくで包み込み唇を離すと、生田が掠れた声で囁く。
「手加減出来ねーよ」
「いい。どんなことされたって、生田にならいい」
「――ホントに、バカ」
最後にそう言葉を吐くと、噛みつくようなキスが降って来た。
あとはもう夢中で。一刻もはやく一つになりたくて。着ているものすべてが邪魔で、身体が二つに分かれているのがもどかしくて、お互いに必死に脱がせあった。少しでも離れていたくなくて、触れ合わせることの出来る場所はすべてぴったりと身体をくっつける。手に触れる肩も、腕の筋肉も、肩甲骨も、流れる汗も。肌に吸いつくようにくっつく胸もお腹も脚も。唇で触れる顔も髪も。全部が愛おしくて。こんな感情、生まれて初めて知ったものだ。それを伝えたい。私の全部で伝えたいって思った。
どうか、伝わってほしい――。