臆病者で何が悪い!
――ガチャ。
「あれ?」
田崎さんが扉の方に視線を送る。
「誰か、来たんでしょうか」
今、扉が開くような音がした。執務室にある扉には真ん中に縦長のガラスがはめ込まれている。そこに視線を向けても、特に人影は見えなかった。
「気のせいかな」
「そうですね」
二人で顔を見合わせた。
それからはもう夢見心地で。
田崎さんと一緒に食べるサンドウィッチの味はよく覚えていないけれど、田崎さんの優しい表情だけは脳裏に焼き付いた。