臆病者で何が悪い!

既に十分過ぎるほどのアルコールを摂取していたお姉様が突然生田を指差した。

「こんなに性格のいい子、野放しにして調子こいてんじゃないわよ」

「はぁ?」

「離婚したばかりの私が言うのもなんだけど、さっさと結婚しちゃいなさい!」

「ぶっ!」

ビールを口にしていたら、それを吐き出しそうになった。お姉さん、酔っているからと言って、それはあまりに爆弾発言です!

それは、あまりにデリケートな話題で。私は、身振り手振り身体を乗り出した。

「私たちは、まだ――」

そういうんじゃない、と言おうとした私より生田の声の方が先だった。

「勝手なこと言うな。姉貴には関係ない」

その声が思いもよらず冷たいもので、無防備にも胸に痛みを感じた。

「な、何よ、その言い方! 沙都ちゃんの前で」

「うるさい。他人にとやかく言われることじゃない。放っておいてくれ」

生田は、そう言い放つとお姉さんから身体を逸らし、ジョッキを口にしていた。

「お、お姉さん。私たちは、付き合って間もないですしまだまだそういう段階ではないですよ」

慌てて取り繕う。

どうしよう、なんか私、ショック、受けてる――?

いや、ここは別にショック受けるような場面じゃないでしょ。うん。そうだ。別に、どうもしない。

「運命の人なら、時間なんて関係ないんじゃないの? 私は、沙都ちゃんに妹になってほしいんだもん……」

そう言うと、ばったりとテーブルに突っ伏してしまった。

「お、お姉さん?」

肩をトントンと叩いてみると、静かな寝息が聞こえて来た。

「――ったく。言いたいことだけ言って、寝ちまったみたいだな。この酔っ払い連れて、もう帰るか」

「う、うん」

生田が席を離れ、会計をしに行く。その背中をつい見てしまった。

生田はお姉さんの言葉に、何を思った――?
あんまり、触れてほしくなかった――?
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