臆病者で何が悪い!

(沙都、ごめん。すっかり忘れてたんだけど、今度の土曜、俺予定があった)

それは、週の真ん中水曜日のこと。夜の12時前に生田から電話があった。

「予定? うん、分かった」

ということは、今度の土曜日はフリーになる。久しぶりに家の掃除でも徹底的にしようかな――。そんなことを考えていた。

(大学時代の恩師がこの三月で退官するんだ。それで、大学で教授の最終講義があって。それに行って来るよ)

「そうなんだ。じゃあ、久しぶりに大学時代の友達にも会えるね」

(まあな……。もっと早くに言っておけばよかったな。仕事とか姉貴が来るとかでバタバタしていて、本当にすっかり頭から抜け落ちてた)

そんなところも生田らしい。思わずこっそり笑ってしまった。

「ううん、いいよ。一人でもいろいろやることはあるし」

(なんだよ、もっと残念そうにしろよな。来週からは出張もあるし、貴重な土日なんだから。って、俺が怒るのもおかしいな。なるべく早く帰るから、俺んちで待ってて)

「でも、久しぶりに集まるんでしょう? 私のことは気にせずゆっくりしてよ。飲みに行ったりとかするでしょ?」

卒業してから数年、懐かしい気持ちにもなるだろう。

(でも、待っていてほしいんだ。いいか……?)

それは、もちろん。

「うん、待ってる」

むしろ、嬉しい。そういう時にも私のことを考えてくれているんだと思える。
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