臆病者で何が悪い!

風呂から出て、スマホをチェックすると、生田からのメールを受信していた。

(これから帰る)

え――?

そのメールが送信されたのは20時30分頃だ。思っていたよりもずっと早い。ちらりと時計を見れば、そろそろ21時になろうとしていた。

ということは、そろそろ帰って来る――?

そう思った矢先だ。

「沙都、ただいま」

ガチャリと玄関のドアが開いた。

「早かったね。飲み会は?」

私が、まだ乾ききらない髪のままで玄関まで出て行くと、すぐさま生田が飛びついて来た。

「ちゃんと行ったよ」

「そ、そう。でも、もっとゆっくりしてくればよかったのに。積もる話もあったでしょ?」

「話? ああ、それなりにちゃんとして来たよ」

私の身体を抱きしめて、その顔を肩のあたりに埋めて来て。なんだかいつもの生田と少し違う。

「教授に挨拶も出来たし。やるべきことは済ませてきたから。そうしたら、あとは、もう帰って来ることしか考えてない」

「そ、そっか……」

なんだかよく分からないけれど、とりあえず、生田の背中をぽんぽんと叩いた。

「……沙都、いい匂いがする。風呂上り?」

「そう。生田も、入ったら?」

「ん」

そう言っても、なかなか動こうとしない。

「ここ寒いし、部屋に入ろうよ」

「うん」

生田の手を引いて、ベッドへと腰掛けさせた。一体、どうしたんだろう。何かあったのかな……。そして、生田の隣に私も腰掛けるとそのまま押し倒された。と思ったら、そのまま私の身体の上に生田の身体が重なって、そのままじっとしていた。

「生田……?」

「少しだけ、このままでいい?」

「え? あ、うん」

大きな体が子供のように見える。

「酔ってる?」

「そんなには酔ってない」

「そうだよね」

この時間なら、大して飲んでいないはずだ。そのくらいのアルコール量で生田が酔うはずがない。
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