臆病者で何が悪い!
「……久しぶりに会えた友達とかいたんじゃないの? 盛り上がらなかったの?」
私は、諦めて生田の背中を優しく撫でた。
「盛り上がってたんじゃないか」
「なんで、そんなに他人事なの?」
ふふ、と笑ってしまう。
「俺、あんまり友達いねーし」
「嘘」
「ホント」
生田の手のひらがおもむろに私の髪に触れる。でも、身体は私の身体の上に投げ出されたままだ。友達いないって……。それ、生田の方が関心示していないだけで、絶対周囲の人は気になってたはずだよ。
「その点、おまえは友達多いよな。よく大勢でわいわいしてる」
「それだけが、売りだからね」
私を抱きしめたままで、その表情は見えない。
「……なあ」
「ん?」
ゆっくりと生田が身体を起こし、私を見下ろした。他愛もない話題をしていたとは思えない、思いのほか真剣なまなざしで面喰う。
「出張から帰ったら、おまえに話がある」
「話? 今じゃ、だめなの?」
軽い口調で笑っても、生田の表情は全然緩まなかった。
「さらっと気軽に話せるようなことじゃないから」
「そ、そう……。なんか、怖いな」
それでも、私は無理に笑顔を向けた。
「大事な話だ。だから、そのつもりで。分かったか?」
「……はい」
どうしてだろう。生田までも表情がかなり強張っている。
話って何?
自然と胸の鼓動が早くなった。
「よし」
生田はいくぶん安心したように、少しだけその口元を緩めた。なんの話だか全然想像もつかないけれど、大丈夫だよね……。
「……じゃあ、俺も風呂入って来る。待ってて」
今度はうってかわって、二人きりの時にだけ見せる甘い顔。切れ長でどことなく冷たさをたたえたその瞳が甘くなって見つめられると、私は一気に心拍数があがるのだ。いつまで経っても慣れない。