臆病者で何が悪い!
「眞がニューヨークに赴任することになったって母親から聞いて、眞に沙都ちゃんとどうするのかって聞いたのよ。そうしたらもう別れたって言うからびっくりして。あんなに二人仲良かったのに、どうしてそんなことになったのか全然分からなくて。眞もそういうこと私に事細かに話す性格でもなければ、私たち姉弟仲良くもないしね。もしかして、眞があなたに何か酷いことをした?」
「いえ! 違います。全然違いますから!」
そんな勘違いをしてほしくなくて、私は気付けば声を張り上げていた。
「じゃ、どうして? 眞が原因じゃないならどうして。私、あなたと眞の二人の関係、見ていてとても好きだったから。だから、どうしてもこのままにはしておけなかった」
「ごめんなさい……。ごめんなさい」
俯き、膝の上で手のひらを握りしめる。
「どうして、沙都さんが謝るの?」
手の甲が白くなるほどに握りしめていた。その手をお姉さんがそっと包み込む。
「……ごめんなさい。私が全部、悪いんです」
お姉さんの前で泣く資格なんてないのに。次から次へと涙がこぼれて、ずっと蓋をし続けていた自分の感情を一緒に吐き出す。あの日からずっと、蓋をして密閉していた生田と私の間にある現実を、お姉さんに打ち明けた。
「――あんなに大事にしてもらっていたのに、あんなに愛されていたのに、生田の気持ちを信じ切れなかったんです。そして、私は、何もせずに逃げました」
生田に何も聞けないまま、離れて。向き合いたくなくて、頑なに逃げた。生田の気持ちを踏みにじり、傷付けた。
「だから、生田の気持ちがなくなっても、全部自業自得です。取り返しのつかないことをした、自分のせいで」
私に向けられていた愛情が消え去った喪失感からも逃げようとしていた。
でも、それも全部卑怯なことだった。
「一方的に傷付けたんです。自分を守ることが誰かを傷付けることになるなんて知らなかった。傷付きたくなくて、自分を守ることしか考えられなかった――」
「それで……? 沙都さんは、どうするの?」
静かで穏やかな声だけれど、どこか突き放したような声だ。