臆病者で何が悪い!
「逃げたことを悔いて、信じられなかったことを悔いて。それで? 泣いておしまい? 悔やんでおしまいなの?」
「お姉さん……」
俯いていた顔を上げると、そこには真剣な眼差しをしたお姉さんの表情があった。
「ここからは、眞の姉としてじゃなくて、あなたの友人として言わせてもらう」
その真っ直ぐな目が怖かった。でも、絶対に逸らしてはいけないと思った。
「そうやって、沙都さんは一体いつまで逃げ続けるの? 結局沙都さんは、今も逃げてるんだよね? 傷つきたくない気持ちのまま逃げてるんだよね?」
「でも、私は生田のことをすごく傷つけたんです。今更、もう何も言う資格なんかない――」
「それは、眞のためなの? 違うよね? 結局、自分が傷つくのが嫌だからだよね?」
私は、言葉を失う。
「眞のことより、自分を守ることの方が大切で、眞のことなんて大して好きじゃなかったんだから、しかたないよね――」
「違います! 違う、私は――」
私は、生田のこと、好きだった。心から、好きで、たまらなかった。それだけは、嘘じゃない。
「違うならなに? あなたは、本当はどうしたいの? 今一番望んでることは何なのよ!」
「この先もずっと一緒にいたいです! 生田のこと好きだから、本当は離れたくない!」
そう泣き叫んで、言葉にしてしまった。それを認めてしまえば、言葉にしてしまったら、もう自分は崩れ落ちてしまうと思っていた。取り返しのつかない喪失感で、壊れてしまうと分かっていた。だから、固く蓋をしていた。嗚咽でどう呼吸したらよいかわからなくて、激しく肩を上下させる。
お姉さんは、溜息をつくように息を吐いた。