臆病者で何が悪い!

「生田もさぁ、なんだかんだで義理堅い男なんだよな。おまえ、内野と同じ課だったし、同期として見送ってやりたかったんだろう?」

遠山が遅れて来た生田のために、生ビールを差し出していた。

「なるほどな。さすが、仕事ができる男は、こういうところまで押さえておくってことか」

「生田君、やさしー」

遠山の解釈に、皆が納得する。私としては、そんなことより、隣に座るこの男に心臓がドキドキして仕方がない。急に、突然、現れないでよ。心の準備ってものがあるわけで。

あの空港以来、顔を合わせるのは初めてなのだ。いや、テレビ電話で顔は見ていた。でも、こうして実物を前にするのは、あの恥ずかしい空港以来で。それどころか。そうは言っても、空港でなんてほんの数分程度のやり取りだ。こんなに間近に生田を感じるのは、もう何か月も前で……。

今頃になってあれやこれやといろいろ思い出して、落ち着かない――!

と、一人あたふたとしていたら、隣に座るこの男がとんでもないことを言い出した。

「今日は、みんなにお詫びに来たんだ。だから、この飲み会の日に合わせて帰国した」

「お詫び?」

同期皆が生田に注目する。当然その中に私も含まれる。

「みんなの沙都を俺が奪うことになったから。一言詫びを」

え――?

「は……?」

私も皆も、目が点になる。

「沙都を俺だけのものにしてしまうから。ごめんな」

は? 何言ってんの?

「え……、それって一体どういう……」

「今、普通に”沙都”って言った? なんなの……?」

周囲がざわざわとし始める。そして、次の瞬間、大声が上がる。
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