臆病者で何が悪い!
「ちょ、ちょいたんま! それって、どういうことだよ!」
「二人、どうなってるの?」
みんな腰を上げて身体を乗り出して来る。それなのに、生田は顔色一つ変えずに、平然としていた。
「どういうって、おまえら、なんだかんだでこいつのこと慕ってただろ? 沙都に頼って甘えて、それってこいつにめちゃくちゃ心許してるからだよな? でも、悪い。もう、俺だけのものだから。おまえら、そろそろ自立して」
「違う! そっちじゃなくて、そもそも論を聞いてるんだ! 二人は一体どういう関係なんだ!」
何故だか桐島が、皆より一際大きな声を上げた。
「――どういう関係も何も、俺の大切な人だけど」
「い、生田っ!」
もう耐えられなくなって、私は生田の言葉を遮る。桐島は私なんかに目もくれず、生田を問い質していた。
「二人、付き合ってたってことか?」
「だから、そうだと言ってるだろ」
「いつからだよ!」
「ああ、一年前くらいか? もう少し後か……。まあ、だいたいそれくらい」
私一人が俯く。皆の視線が次第に私に向けられる。
「沙都、どうやって生田君を落としたの? ねえってば! ずっと隠してたの? そんな素振り全然……」
生田によって追いやられた香蓮が、生田を挟んで私に詰め寄って来た。
「い、いや、あの、ごめん。職場内だから言いづらくて」
あんたのせいで――!
そう思って生田を睨んでも、知らんふりだった。
「嘘……」
まだ信じられないと言うような目で香蓮が私を見る。
「本当だよ。私、前から知ってたし……」
京子が香蓮に向かってそう言葉を挟んだ。
「俺が落とされたんじゃないから。俺が、口説き落としたの。それはもう引くぐらいに強引に。前に、飲み会でもそう言わなかったか?」
生田が大きく息を吐き、改めて皆を見た。
「……えっ。あれ、本気だったのか? てっきり、生田の気の利いたジョークかと……」
遠山がぼそぼそと言っている。
「勝手に冗談だと判断したのはおまえらだろ。俺はジョークだなんて一言も言ってない。あんなこと、冗談で言う趣味もない」
「――生田」
「もういいだろ? 仕事も辞めるんだ。本当のことを言った方がいい」
青ざめる私に生田が涼しい顔をして言った。
「俺がおまえのこと好きでたまらないってこと、分からせたいんだ」
もうだめだ。私に生田を止める術はない――。