臆病者で何が悪い!
バスに15分ほど乗ると、私の自宅の最寄のバス停に到着する。
「……なんというか、のどかだな」
「田舎だって言いたいんでしょう?」
「いや、こういう方が落ち着くよ。地方出身者としては」
そう言って生田が笑った。
「じゃあ、行こうか」
「そう、だな」
やっぱり、少し緊張しているようだ。
どうみたって身だしなみよくかっちりと着こなしているというのに、ジャケットの襟元を正していた。
「うちの家族、本当に、ふっつーの人たちだからさ。普通でいいよ。そんなに緊張しないで」
軽い口調でそう言うと、生田が少し恨めしそうな顔で私を見下ろして来た。
「おまえが俺の実家に来た時、俺が同じようなことを言ってもおまえは全然楽になってなかっただろ? それと同じだ」
「なるほど……」
確かに。あの時の緊張を少し思い出す。
「――でも、い、じゃなくて、眞なら、絶対大丈夫だから!」
生田の腕を掴んで見上げる。
そうしたら、引き締まっていた生田の表情がくしゃっとほころんだ。
「今ので、ご飯五杯は行けそうだな。力がみなぎるよ。俺のすべてを懸けて、おまえの家族に気に入られてみせよう」
「おう!」
二人で笑い合い、手を繋いだ。
近所の人に会わないように――と注意をしながら。