臆病者で何が悪い!


「お父さん、生田さん、連れて来たよ」

「初めまして、生田眞と申します」


生田がお父さんの前へと出向き、頭を下げた。

それでも、父はただ会釈をするだけで、腕を組んだままにこりともしない。


え――?
あなた、そんなキャラじゃないよね――?


数日前、「結婚の挨拶に行くから」と電話で話したら、「沙都が嫁に行く!」とはしゃいでいたはずんなんだけれど……。

お母さんに視線を送っても、ジェスチャーで「分かりません」みたいなことをして。

仕方なく、お父さんの正面の席に生田と私とで並んで座る。
そうしてお母さんもお父さんの隣に座った。

未希は隣の居間のソファから、呑気に私たちを見ている。


「あの、お時間とっていただきありがとうございます。今日は、沙都さんとのことでご挨拶にうかがわせて――」

「待ってくれ」


はい――?


生田の声を何故かお父さんが遮る。


待ってくれって、なんだ?
もう分かってるよね? 今日が何のための日か。

こういう大事な話は最初にしてしまうのがいい。
みんなそう思っているはずだ。

だから、生田が姿勢を正して、お父さんに向き合っていると言うのに。


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