臆病者で何が悪い!




「おうおう、そうだな。眞君は、酒は飲めるほうか?」

「はい。弱くはないです。お父さんに、お付き合いします」

「そうかそうか、そりゃいいなぁ。うちは息子はいないから、なんだか嬉しいなぁ」


生田も嬉しそうにそう答えると、お父さんがさっきまでとはうってかわってはしゃいでいた。


――ということで。

これから先の入籍や式をどうするかという予定を話し合った後で、早速宴会となった。

その日は、日の明るいうちから飲みまくりで、お父さんが誰よりも先に酔っぱらっていてた。


「まだ、いいじゃないかー。もっと、飲もうよ、眞君!」

「もうだめだって。一体何時間飲んでたと思ってるの」


母、娘二人に責められる父。


「お父さん、年末に戻ります。その時に、また一緒に飲みましょう」


へろへろになったお父さんに、生田が肩を貸す。


「お姉、良かったね」


玄関先で、未希が一言そう言った。
私は、素直に「うん」と答える。


こんなに幸せで、私は許されるのかな。

こんなに幸せを感じたこと、これまでにない。



実家を出て、夏の夜の道を生田と歩く。

ここから私のマンションまでが、また遠い道のりなのだけれど。
それすら、楽しいと思える。


「――生田、今日は、本当にありがとう」


生田の腕に手を絡めながら、ぽつりと言った。


「また、戻ってる……」


溜息を零して、生田が笑う。


「あ、ご、ごめん。これから時間をかけてちゃんと直していくから」

「頼むよ、奥さん」


優しい目で見てくれる。


奥さん――。


なんて、いい響き。
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