臆病者で何が悪い!
電車を乗り継いで、私のマンションにたどり着いた時には、もう0時を過ぎていた。
急いでシャワーを浴びて、二人でベッドにもぐりこんだ。
「――なんかさ、結婚て、やっぱり凄いことだよな」
生田の腕に包まれて横たわっていると、低く落ち着いた声が聞こえて来た。
「ん?」
「全然知らなかった人たちと家族になる。その人たちが二十年以上大事に育てて来た人を俺が貰ってしまうわけで。おまえのお父さんとお母さんを見ていたら、自分がどれだけ大変なことを頼んでいるのかって思い知った」
生田の顔を見上げる。
「それと同時に、想いも新たに出来た。沙都――」
生田が私に視線を合わせる。
その瞳は、優しげなものでもあるけれど、真剣なものでもあった。
「この先一生、俺がいるから。おまえの両親に負けないくらい、沙都のことを想ってる。大事にする」
「……ありがとう。でも、もう充分大事にしてもらってるよ」
その胸に頬を寄せる。
心の底から満たされる。
ただこうして触れ合っているだけで、身体だけじゃない。心が温かいもので一杯になって満たされて行く。
生田も、私の背中を抱き寄せて強く抱きしめてくれた。
「沙都……」
少し掠れた声が耳元で聞こえて。
くすぐったくて、肩を竦めた。
「俺、幸せだよ」
「うん」
「今、いろんなこと思い出してる。おまえと出会ってからのことずっと。思い出せば思い出すほど、俺が今どれだけ幸せか実感できるよ……」
生田――。
そう言うと、生田は余計に私をきつく抱きしめた。
自然と涙が溢れる私の唇に、生田の唇が重なる。
最初はただ重なるだけだったのに、強く腰を引き寄せられれば、それと同時に激しいキスに変わる。
嬉しくて。
幸せで。
どうしよう。