臆病者で何が悪い!


八月の終わり、お互いの両親がまともな海外旅行をしたことがないということを知り、せっかくならとニューヨークに呼び寄せた。


早く籍を入れた方が、一緒に暮らすには手続き上いろいろと問題がない。

……という表向きのしっかりとした理由の裏で、

とにかく早くちゃんと夫婦になりたいという俺の焦りと、大袈裟な披露宴はしたくないという沙都の希望が合致して、こっちの教会で式を挙げた。

俺が全ての段取りを整えて籍を入れ式まで滞りなく済ませた。


我ながら、仕事が早い。
いや、仕事よりよっぽど早い。気合が違う。


婚約指輪としてあげた指輪をはめてくれと頼んだら、「立派過ぎて毎日ははめられない」と沙都に言われ、俺は非常に危機感を覚えたわけだ。

左薬指に、なんとしてでも指輪をはめさせないといけない。

語学学校で、変な男が沙都にちょっかいを出しても困る。

だから、早々に結婚指輪も準備して、
語学学校の入学に間に合あわせた。


俺は、沙都との付き合いで何度も苦い思いをしてきている。
その経験から、とにかくいろいろと大変なのだ。


< 385 / 412 >

この作品をシェア

pagetop