臆病者で何が悪い!
「――このスープ、美味いな。トマトと塩味のバランスがいい」
テーブルで向かい合い、夕食を食べる。
沙都お手製のミネストローネの塩加減の絶妙さに、声を上げた。
「本当? 料理上手の眞に褒められると、嬉しいな」
最近では、自然に”眞”と呼べるようになった沙都に、また俺は一人にんまりとする。
結婚して自分が生田になってからも”生田”と呼ばれたらどうしようかと思っていたが、沙都も本当に努力してくれたということだ。
「最近は沙都の方が料理の腕をあげたんじゃないか? 今度の休みは俺が作るから」
「――うん。楽しみ」
そう言って笑う沙都の左手に、自然に目を向ける。
沙都の薬指にはめられたお揃いの指輪――。その指を見るだけで、俺は何とも言えない気分になる。
幸せを実感する気持ちと、
そして、その指に俺の指を絡めたいという、よこしまな欲求と――。
「……ねぇ、眞」
その結婚指輪をはめた指で、俺に触れてほしい。
どこもかしこも――。
って、俺は変態か。
「ねえってば! 聞いてる?」
「ああ、何?」
沙都が俺の顔を覗き込んで来る。
一人ろくでもないことを考えていたことなどおくびにも出さず、優しい夫の顔で沙都を見つめ返す。
「実は、今度、語学学校のクラスメイトで休みの日にちょっとしたホームパーティーしようという話になって――」
「ホームパーティー?」
まさか、男もいるのか――?
でも、すぐに優しいだけではない表情になってしまう情けない自分に、呆れる。