臆病者で何が悪い!
「クラスの担任っていうのかな、スティーブ先生が本当にいい人でね。まだ、こっちでの生活とか学校とか、慣れない人が多いから、ホームパーティーでもしたら打ち解けるんじゃないかって提案してくださって。それで、スティーブ先生の家を貸してくださるっていうの。優しいよね」
スティーブ――?
それ、まるっきり男の先生だよな。
生徒の中にも、男もいるはずだ。
それに確か、沙都の通っている語学学校は少人数制をウリにしていたはずだから、クラスと言っても、5,6人のはず……。
スプーンを手にしたまま、考え込む。
「先生と言っても私と同い年だから、すごく話しやすいんだけど、でもやっぱりまだ会話が上手くできなくてね」
同い年だって?
それは、もはや教師と生徒とは言わない。
同年代の男女。
「私、結局どこに行っても、取り仕切る役が回って来るみたいで。私が一番年上っていうのもあるのかもしれないんだけど、先生との連絡役になっちゃって英語で話すの緊張する――」
「なんで!」
俺は思わず声を上げてしまっていた。
「え……?」
そんな俺に驚いた沙都の顔で、我に返る。
「あ、いや……。そ、そうか。おまえは、まったく、相変わらずだな」
俺は今、ちゃんと笑えているのか?
微笑んでいるつもりだけれど、まったく自信がない。
どうして、同じ年の外国人教師と沙都を親密にさせなければならないんだ。
他の奴らは一体何してる――!
まさか、そんな器量の狭いことを沙都に言えるわけもなく、心の中で散々に悪態をつく。
「本当に。私って、なんかそういうオーラ出してるのかな?」
ふふっと笑う沙都が、少しだけ恨めしい。