臆病者で何が悪い!



その後は、何を話したのかよく覚えていない。

食事を済ませ食器を片付けて、シャワーを浴びて、沙都と二人で少しテレビを観て。

その後、同じ部屋に置いてあるベッドに入った。


セミダブルのベッドに並んで横たわる。
スペースに決して余裕があるわけじゃないから、いつも沙都は俺の腕に腕をからめてくっついて来る。
そんな沙都を引き寄せて、眠る。


それがすごく、安心するのだけれど――。


この日ばかりは、夕食の時の会話が気になって仕方がなかった。


「――確か、沙都のクラスって、中国人2人と、韓国人2人、そして日本人2人の6人だったよな……」

「うん、そうだよ」


中国人の男と女、韓国人の男と女、そして日本人の男と女――。

ご丁寧に同数の男女の組み合わせ。
そこに教師まで加わる。

ホームパーティーとか言って、見方を変えればホーム合コンじゃないか。

分かっている。
頭では分かっているんだ。
そんな不謹慎なものではないと。

分かっているくせに、心の奥底のアホな俺が喚くのだ。
ホームパーティーとかそういう類のものは決して珍しいものじゃない。
語学学校のアクティビティなんかにもあったりするくらいだから。


「ホームパーティ―、なんだか、楽しそうだな。そういうのが一番、会話の上達にもなるよ」

「ああ、さっきの話? うん、そうだね」


心で考えているろくでもないことは押しやり、真っ当なことを言う。


「だからスティーブ先生も提案してくれたのかもしれないね。すごい謎なんだけど、スティーブ先生ってお金持ちの家の息子らしくて。マンハッタンのペントハウスに住んでるらしいの。だから、お宅にうかがうの凄く楽しみ」

「そ、そっか」


クソ。
金まで持ってるのか。


「――だから、せっかくのお休みなのにごめんね」

「え? ああ、いいよ。別に」


いや、本当は行ってほしくないと、言いたい。
でも、俺も少しは広い心を持たないと。

沙都のことは信じているんだから。

おもむろに沙都の手のひらを手に取る。

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