臆病者で何が悪い!
「何着て行こうかな」
二人で一つのクローゼットを使っているから、手持ちの服は極力少なくしている。
「……これだ! これにしよう」
クローゼットに掛けられている服を掻き分けながら、沙都が喜んだように服を一着取り出した。
「私が持っている服の中で、一番素敵なのだもんなー」
身体に当てて、嬉しそうに鏡の前でポーズを取っている。
それは、いつか、姉貴が沙都に買ってやったワンピースだった。
いつもの沙都では絶対に選ばない淡いピンクのワンピース。
着たら着たで、かなり似合う。
いや、いつもは隠している女性らしさを満開にさせてしまう代物――。
「どう? イイ感じ?」
いつの間にか着ていたのか、俺の前で、スカートの裾を持って立っていた。
「あ、ああ、似合ってる」
「なに、その気のない言い方。本当は、私みたいなタイプには似合わないと思ってるんでしょ。いつものジーンズの方がいい?」
怒っているような落ち込んでいるような、複雑な表情で俺を見上げて来る。
そうじゃなくて。そうじゃないんだけれど――。
「いや、すごく、似合ってる。本当だ」
こんなことで落ち込ませたくなくて、沙都に微笑む。
そうしたら、少し安心したように沙都も表情を緩ませた。
「良かった。パーティーとか、行ったことないし。どんな服で行ったらいいのか分からないよね。でも……眞は、相変わらずカッコいい」
そう言って、俺のジャケットの襟元にそっと触れた。