臆病者で何が悪い!
「そんな低レベルな男たちと俺を一緒にしないでくれ」
「す、すみません……」
腕を組んで私を見下ろすように見てる生田に、かくんと素直に頭を下げていた。その瞬間に身体がふわふわとする。
ああ、これ、酔ってるな……。
久しぶりに酔いを実感した。酔いを感じながら、目の前の同期の発言を「かっこいいな」と思ってしまったのは秘密だ。
「すみません、生二つ」
「はい、かしこまりました」
頭を下げたままでいると、生田がビールを注文する声が聞こえて来た。私のジョッキは空になっている。そして、自分で注文せずに済んでいる。
いつもなら、こんな風に落ち着いて飲んでなんかいられないんだけど。
「さっき会った人、あれ、前に付き合ってた男、とか……?」
そう生田に聞かれて、あの時感じた胸の痛みが蘇るのに、素直に答えてしまっていた。
この日、私は完全に飲みすぎていた。その酔いのせいで、生田を前にして感じるぎこちなさも付き合いづらさもどこかへと行ってしまって、酔いに任せて気分が大きくなって、口元まで緩んでしまったようだ。
「ああ……、あの人ね。その通り。ビンゴ!」
不必要に明るい声でおちゃらけた。
「……やっぱりな」
一口ビールを口にして、生田がぼそっと呟いた。
「あの場だけで分かっちゃった? それだけ私の動揺ぶりがバレバレだったってことだよね。ほんっとに、情けない。振られた男に再会した時くらい、余裕の態度でいい女を装いたいのにね……。ダメだ、私は」
あはは、と笑って見せても生田は笑ったりしなかった。バカにするでもなく呆れた風でもなくただビールを飲んでいた。だからかな。何故だか分からないけれど、何もかもを話したくなってしまったのだ。
大学を卒業してから封印し続けて来た古傷を、曝け出してしまいたくなった。