臆病者で何が悪い!


「おい、内野。こいつ、吐きそうだって」

希が席を移動すると、そこに今度は違う男子がやって来た。
同期の男二人組。片方が肩を支えて、一人は口元を押さえている。

「ちょっと、酔い潰れるには早すぎない?」

「こいつ、ここんとこ終電続きだったみたいでさ。そんなところにろくに食べずに飲んでばかりいたから回りが早かったみたいだ」

確かに、やっと国会も閉会したばかり。国会が開かれている期間中は、国会議員からいつ各省庁に質問がくるか分からない。それがはっきりするまで帰れないのだ。時に、それは深夜にも及ぶ。連日省内には待機がかかっていた。疲労もピークに達しているところだろう。酔い潰れても無理はないかもしれない。

「ひとまずトイレに連れて行った方がいいよ。私はおしぼりとお水たくさん頼んでおくおから」

「頼む」

そう言って、男二人は座敷の外へと出て行った。

「すみません、おしぼりとお冷、いくつかください」

目に入った店員にすぐさま声を掛けた。

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