臆病者で何が悪い!

「はぁ」

二時間半ほど経ってお開きの時間になった。
会計を済ませ、忘れ物チェックをして、店の外に出ると自然と息を吐いていた。

「沙都、お疲れ」

希が私の肩をぽんっと叩く。ほんのり目が赤くなって潤んで、まさに麗しさに磨きがかかっていた。

「この後、みんなどうするって?」

大体は、この後二次会になだれこむコースが普通だ。

「飲み足りない人で、次の店行こうって。沙都も行こうよ!」

いつもこの瞬間、ほんのわずか、本当にほんのわずかよくわからない躊躇いがうまれる。それがどうしてだかは分からないけれど。

「行く行く。どこの店にするって?」

結局絶対行くわけだし。

「一次会は、沙都は飲むより働いてばかりだったから、二次会は飲むことに徹していいからね」

「本当だよ。ちゃんと、みんなに労わってもらうわ」

そう言って希とともに歩き出した時に、例の二人、桐島・香蓮の二人組が目に入った。

「あの二人……。なんか、いい感じじゃない?」

希も気が付いたみたいだ。

「さっきも、桐島から意気込みがバンバン伝わって来てたからね。ここぞとばかりに押すんじゃない?」

香蓮を見ても、まんざらでもなさそうだし。

「そう言えば、私たち同期って、同期内カップルっていないよね? 秘密にしていなければ、だけど」

「確かに……。聞いたことないし、そんな感じもしないしね」

極秘に付き合っているという場合もあるかもしれないけれど、同期の女子は四人、誰を見てもその気配はない。

「でも……。同期同士って、結構微妙だよね。あの二人けしかけておいてなんだけど」

希がそんなことを言い出した。

「だって、同期じゃなくなるってことは出来ないんだし。そのままうまくいけばいいけど、別れるときつそう」

「それは、あるね」

同期って、妙に繋がりが強い。こうして集まったり、気心知れているだけに距離も近い。
その中で、気まずくなったりしたら……。想像するだけでも、結構しんどい。集まってストレス発散も出来なくなるんだ。

まあ、私がそんな状況になることはないからいいけれど――。

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