臆病者で何が悪い!
こういうの、もう御免だ。私のテリトリーに勝手に入って来ないでほしい。
「最近、俺を避けてるよな? 俺のことを考えろとは言ったけど、避けろとは言ってない」
腕を掴まれたまま、声を荒らげられる。まったくもって意味不明だ。
どうして、私が怒られなくちゃいけないの?
そんなの生田が勝手に言ったこと。言う通りにしなければならない理由なんてない。
「避けてないよ。普通だよ。前は、私たちこんな感じだったよね? 生田おかしいよ。訳が分からないことばかりしたり言ったり。一体何がしたいのよ!」
もうやめてほしい。そんな風に、私みたいな女に絡んでこないで。
「何がしたいかだって? 今、それを聞くのか? なんでそんな風に分からないふりをする?」
分からない”ふり”――?
私の感情の中の何かのコードがぶちっと切れた。
勝手にキスをしてきて。
甘やかすように抱きしめて。
人の心を乱すだけ乱しただけだ。
生田のせいで、散々戸惑った。混乱しまくっていたのだ。生田の考えていることなんて、分かるわけない。それを、無理矢理に何でもないこととして整理しようとしていたのに。
全部、生田のせいなのに――。
「分かるわけないでしょ? 分るわけないじゃないっ!」
どうしようもないほどに腹が立って、思いっきり生田の腕を振り払った。
背中に感じるビルの壁のコンクリートの冷たさだけを身体に感じる。
あとはもう、感情のままに生田にぶちまけていた。