そうだ、鏡は異世界に通じているらしいよ
拒否
時々、この人が私を見る目におかしな色が混ざる事がある。

そう例えるなら、砂糖と蜂蜜と、真っ黒な何かをぐちゃぐちゃに混ぜてコトコトと煮詰めたような、そんな色。



あなたは私に何を求めているんですか。
あなたはどうして悲しむんですか。
あなたの正体は。




「はは、何が悲しいのかって?」

一瞬目を離した隙に、彼の悲嘆の表情はサッパリと消え失せていた。燕尾服の裾を直し、スタッと立ち上がる。

「君が気にすることじゃないよ」

……本当に、分からない。

この人は明らかに何かを隠している。
私をここに引き込んだのも自分だと言うし、謎に包まれた男性だ。


「あの、気になってた事があったんですが」

聞くなという空気はもう無視しよう。彼の正体まで無理矢理探ろうとは思わない。

だけど。




「私をこっちに連れてきたのが龍さんなら、元の世界に私を返す事をどうしてしないんですか?」
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