そうだ、鏡は異世界に通じているらしいよ
軽い気持ちでそう聞いた。ただ彼の気まぐれ……そう、ただ人間を観察したいだけならもっといいサンプルがいると言いたかった。もっと光り輝いていて、誰からも賞賛されるようなそんな子が。

一瞬彼から、視線を外していた。








「ふざけないでくれないかな」

心臓が震え上がった。人が相手をしてはいけないモノのような気がした。

怖かった。怖くて、彼の方を見る事が出来ない。

その声はあまりにも暗く、黒く、低く、怒りに満ちていたのだ。

ズサリと後ずさりしようとしたが、彼の手が素早く私の手首を捕らえる。そして痛いほどの力で握りしめられた。
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