そうだ、鏡は異世界に通じているらしいよ
はく、と無意味に口が動いた。

「もしかしてきみさ。僕が気紛れできみをこっちに引きずり込んだとか思ってる?」

怖くて龍さんの顔を見ることが出来ない。

「ねえ、こっち見てよ」

頬に手が添えられる。

……何故だろう、彼の声音は酷く恐ろしいものだったけど、その手だけは妙に優しかった。

「きみじゃなきゃ、駄目だ。僕はきみを選んでこちらに招いた。頼むよ、

何も聞かずにここにいてくれないか」

彼の声音がだんだんと弱々しいものになっていく。驚いて彼を見ると、彼は悲痛な表情をして泣いていた。
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