そうだ、鏡は異世界に通じているらしいよ
ぱちっと目を開けた。

……変な夢を見ていた気がする。誰かに覗き込まれていた。

目だけを動かして解放的な縁側を見ると、もう既に東の空が白み始めていた。

それと同時にぐぅ、と腹の虫が鳴く。

「……何か食べようかな」

むくりと体を起こし、布団を適当に畳んで押し入れに放り込む。


そして小さく欠伸をしながら廊下を歩いていると。


「結月様!!」

「うわぁあっ!?」

背後、それも至近距離から突然声をかけられたため、心底驚いてしまった。

「おおっ、可愛い悲鳴ですね!」
「入鹿さんほんっっと止めてください!」

私の後ろでニコニコと人の良い朗らかな笑みを浮かべていたのは、指輪の付喪神、入鹿さん。私と同じくらいの身長だ。

「だって龍さんばっかりズルいと思ったんですよ!えへへ、僕だって結月様ともっと仲良くなりたいです!」

ふわふわとした青い髪が揺れる。

「朝ごはんは僕のところで食べましょう!ね、龍さんや春さんにはもう言ってありますから!」

「え、そ、そうなんですか………ならお言葉に甘えて」

そう言うと、入鹿さんはむんずと私の手を掴み、下の階へと引っ張っていく。
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