そうだ、鏡は異世界に通じているらしいよ
気持ちが昂ってしまった。

だって、だって元の世界ではこんなに気遣ってもらった事もなくて、誰かと食べた事もなくて、こんなに美味しい食事をさせてもらった事もなくて……

目頭がじんわりと熱くなる。

こっちに来てからの今までの食事は、こんな気持ちになる事を恐れて一人でとっていた。


「結月様」

柔らかそうな白い手が、スプーンを持つ私の右手に添えられる。


「食べてください。食べて、嫌なことなんか忘れちゃってください」

その優しい声に、また零れ落ちそうになる涙を必死に抑え、私はスプーンを動かした。
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