そうだ、鏡は異世界に通じているらしいよ
奥に行けば行くほど、ぽつりぽつりと人の姿が消えていく。やがて地面も舗装されたものから、土が剥き出しのモノへと変わっていた。

「…はぁ、はあ」

急な階段を上りきる。どうやら本殿の裏側に来たようだ。流石にここに人はいなかった。


月明かりだけが照らす世界。私はくるりと目を動かし、辺りを見回す。

「……あれ」

目線の先に、更に上へと続く階段があった。しかも綺麗に舗装されている。おかしい。ほんの数日前、昼間にもここに来たことがあるけれど、あの時はこんな階段なんか無かった。

階段の奥、目視できないところまで赤い鳥居が何処までも続いている。

しゃん

ふらりと足を動かす。

しゃん、しゃん…

美しい鈴の音。思考より先に、体が勝手に動き出す。

「誰なんですか」

階段を上りながらそんな声を漏らすも、当然返答が返ってくる筈もなく。




気づいた時には長い長い階段を上りきっていた。
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