そうだ、鏡は異世界に通じているらしいよ
そこには、蝋燭の灯りだけが揺らめく建物がぽつんと建っていた。まるでこの神社の本殿のよう……本当にそっくりだ。しかし鈴の音はもう聞こえなくなっていた。

どうせ行くあてもない。

何処かに座るところでも無いかと、私は建物へと入る。

「……お邪魔します」

ここは神社だ。何かの祟りに遭うのも怖いので、一応挨拶だけはしておく。


建物は中も、本殿にそっくりだった。

そういえば本殿には、綺麗な鏡が供えられている。いったいいつの時代から存在していたのかは分からないが、私も幼い頃からあの鏡を見て美しいと感じていた。

ならばここにもあるのだろうか。

その鏡を探すと、すぐに見つかった。両手で持てる大きさで、龍の彫刻が施されている。




『そうだ、鏡は異世界に通じているらしいよ』





見つめた途端、鏡が蒼く発光する。頭がぐわんと痛む。


記憶の最後に捉えたのは、建物から見える紅い満月。
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