そうだ、鏡は異世界に通じているらしいよ
「えっと、じゃあ次はワタシですかね」

さっきからじっと私を見つめていた、ポニーテールで薄い緑の髪色の男性がそう言った。何だか紳士的な雰囲気を感じる。

「ワタシの名は翠。アナタの持っているペンダントの付喪神です。中学卒業の際に貰った記念品のアレですよ」

まさかあのペンダントが人の身を取るなんて。もちろん中学校にもいい思い出は無かったが、どうしてもアレだけは捨てようという思いにならなかった。

最後だ。私は薄く短い紫の髪の男性を見る。

「結月様、俺の名前は光!結月様が使ってくれてた万年筆の付喪神だよ!結月様が高校近くの雑貨屋で気まぐれに買ったアレ!大切にしてくれてたよね、ありがとう!…よろしくね、これから」

雑貨屋で気まぐれに買った万年筆。やはり覚えていた。光に反射して輝かんばかりの装飾がとても美しかったのだ。インクの色は紫。


「さて。これで全員だよ、結月ちゃん」

龍さんがあの胡散臭い笑みで私に語り掛ける。


1つだけ、分からないことがあった。


入鹿さんは指輪の付喪神。
春さんは栞の付喪神。
剣さんは短刀の付喪神。
翠さんはペンダントの付喪神。
光さんは万年筆の付喪神。


ならば、龍さんは一体何の付喪神なのだろうか。分からない。

「あの、龍さん」

「さぁ結月ちゃん!この世界はまだ広い!もっと案内しようじゃないか!」

私の言葉を遮るように龍さんは大きな声を出す。

「あ!いいですね!僕も連れてってください!」

入鹿さんが朗らかに笑う。


何故龍さんが自らの正体を明かしたがらないのかは分からないが、ここまで妨害されては無理やり聞ける空気でもないだろう。

とりあえずは流れに身を任せる事にした。
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