そうだ、鏡は異世界に通じているらしいよ
この世界に連れてこられてから、およそ2週間という時間が流れた。私の持っていた時計も全て狂ってしまっていた為あまり詳しい時間は分からないのだが、この世界にも一応、時間や朝・昼・夜という概念が存在するらしい。それによって大まかな時の流れは判明した。

「龍さん」

きゃっきゃと私に絡みついてくる入鹿さんを何とか振り切り、城の屋根の上で何処か遠くを見ていた龍さんに声をかける。

……ところが、彼は気づかない。

よく見ると、その肩が小さく震えている。小さな嗚咽も聞こえた。

「……龍さん、泣いてるんですか」

その背中が、何だかとても小さく見えた。消えてしまいそうだと感じた。

ぽん、ぽん、と彼の肩を一定のリズムで叩く。

「…………あぁ。いたんだね、結月ちゃん」

「あの」

どうしてこの人はいつもいつも表情を偽るのだろう。あの胡散臭い笑みで全てを隠そうとするのだろう。




「何がそんなに悲しいんですか」
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