キミが可愛いわけがない
(side 芽郁)


「ユズは若松が自分と友達になりたがってることに本当は何かあるんじゃないかって疑ってる」


「でしょうね」


「…でしょうねって。いいか?若松があそこで熱くなって変なこと言わなきゃ、疑われずに済んだんだよ。なんの真似だよ、全く」


「仕方ないじゃない。思わず出ちゃったものは。悪かったと思ってるよ」



昼休み。
ひとけのない校舎裏で若松とお昼を食べながら、この間の勉強会について話す。



友達になってユズに近づいて有馬からユズを引き離してくれるはずの若松が、早速本人に疑われたんじゃ意味がない。


もっとうまくやらないと。



「明日の放課後、遊びに行こうってユズちゃんを誘った。安心してよ。うまくやるから」



「あぁ」


「私も頑張るから。だから、楠木くんももうちょっとユズちゃんと距離縮めてよね。私だけ頑張るのは違うから」


焦って思わず若松にあたってしまったけど、すごく働いてくれてる。


俺1人ではどうすることもできなかったんだから。


食べ終わった弁当箱を片付ける若松を見る。



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