キミが可愛いわけがない

「あのさ、若松」


「ん？」


「さっきの言葉訂正。若松にはすげぇ感謝してる」


「え、やめてよ。別に楠木くんのためにしてるわけじゃないし」


「それでも、ありがとう」


「お礼なら、ユズちゃんと付き合えてから言ってくれる？まだ何も始まってない」


ユズと俺が付き合うなんて。
全然想像できなくて、少し笑ってしまう。


だけど、隣で笑うユズの手を普通につなげる瞬間が欲しいという気持ちは日に日に大きくなっている。


「若松はさ…あいつのどこが好きなの？」


俺がそう聞くと、若松は少し驚いた顔をしてから少し顔を赤く染めだした。



「初めは私も、チャラそうだな〜くらいな気持ちで彼を見てたんだけどね。去年、見ちゃったんだ。有馬くんがピアノを弾くところ」


「ピアノ？」


「うん。ピアノを弾いてる時のあの表情が忘れられなくて。彼の普段のあの感じとは全然イメージ違って、本当の有馬くんってこれなんだろなって思ったの」


あのチャラ男がピアノね。
正直、あんまり言いたくないけど、似合う気がする。