キミが可愛いわけがない


「有馬くんのあのピアノ弾く姿みたら、ユズちゃんも落ちちゃったりして」


若松がククッと笑って変なことを言う。


「冗談でも許さない」


「フフッ、半分本気だよ?」


自分で言いながら、きっと自分が1番傷ついてるくせに。
バカな女だ。
男子からチヤホヤされてて、学年のミスにも選ばれたのに。
今の彼女の目には自信のなさだけが写っている。


「そんなこと、絶対させねーよ」


「うん」


1人だったら落ち込む一方だったかもしれない。
だけど、今は似た状況の若松がいることで前を向ける。


2人なら辛さを分けあえる。


片思い同士。



絶対に、


誰にもユズは渡さない。




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