キミが可愛いわけがない





「柚希〜黄色かして〜」


「え、嫌だ。私黄色使わないし」


「ケチ〜〜」


「自分の絵の具使えばいいでしょ?」


「ダメ。柚希の使いたい」


「バカ」


午後の授業は2時間連続の美術。


先生が一人一人にランダムで配った風景写真を見ながら絵を描くこの日。


俺の目には、ユズと有馬の姿しか見えない。


なんだよあれ。


選択科目でユズと同じになれたのが嬉しかったけど、これじゃまるでカップルのイチャイチャを見せられてるようだ。


ユズはともかく、あの有馬のあからさまなアピールに腹が立つ。


何が男とは関わらないだよ。


なんて。


ユズは何も悪くないのに、彼女を何度も責めそうになる。



「楠木〜手が止まってるぞ〜」


っ?!


先生にそう注意されて、ハッとする。


それと同時に、ユズと目があったけど、バッとそらされた。



なんだよ!俺なんかしたかよ!
なんで俺のことはすごく敏感に警戒するのに、有馬とは普通に喋るんだよ。


つーか、有馬はなんで美術?
お昼に若松が言ってた、有馬がピアノを弾くって話が本当なら、あいつ音楽選んだ方がいいんじゃないのか?


まぁ、どうでもいいけど。



俺は、軽くフンッと鼻を鳴らしてから筆を持つ。



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