キミが可愛いわけがない
「あ、柚希から聞いた。芽郁は愛想がないって」
「……」
殴りてぇ。
思い切り頬をぶん殴りてぇ。
ユズを下の名前で呼んでることも、俺のことをユズが呼ぶみたいに名前で呼んだのも。
すごく腹が立つ。
わざと煽っているのか?
でも、ユズがこいつに俺の話をしたと思うと少し嬉しさもあるわけで、複雑な気持ちだ。
「良い子だよね、柚希」
「はぁ?」
「口悪いけど結構ウブっていうの?反応が可愛い。俺ああいうの──────」
「あのさ」
お前がユズのなにを知っているんだ。
俺は、有馬の声を遮って彼をギッと睨みつける。
「うわ〜!有馬くんと楠木くんが喋ってるよー!」
「あの2人仲良いの?話してるの初めてみたんだけど!」
「イケメン同士が話してるとか絵になるわ〜」
チッ。
「話しかけてくんな」
『ユズに変なちょっかい出すな』
そう言いそうになって、やめた。
俺はユズの彼氏でもなければ保護者でもないから。今の俺にそんなセリフを言う権利なんてない。
「まぁ、ライバル同士頑張ろうよ」
っ?!
有馬は俺の肩を軽く叩くと、フッと嘲笑うような顔をして自分の席に戻っていった。