キミが可愛いわけがない

(side 芽郁)


「ん?芽郁?」


家に帰ってもどうせユズは今若松とデートを楽しんでて俺の部屋には来ないことがわかっていたので、本屋で時間を潰していると、懐
かしい声が後ろから俺の名前を呼んだ。


「あ、翔也さん」


後ろを振り返ると、そこには変わらない爽やか笑顔がスーツ姿で立っていた。


「身長また伸びた?」


「俺よりでかいな」と言いながら翔也さんが俺の隣に立つ。


金田 翔也さん。
小学生の頃の俺の家庭教師で、俺が中学に上がった時には教育実習生として俺のクラスにやってきた人。


正直、俺が気兼ねなく喋れていた人は、ユズと、そして翔也さんくらいだったと思う。



昔から優しくて大人で、みんなの輪から外れてしまう俺をいつも気にかけていてくれた。




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