キミが可愛いわけがない
「柚希ちゃんにいつか彼氏ができた時、いつか旦那さんができた時。誰かのものになった時に手を出すのは人としてやっちゃいけないことだと思うけどね」
「俺にそんな勇気…」
「あるわけない?」
「だって…」
「でも現に付き合ってもいないのにクラスメイトの男子と少し仲良くしてるってだけで相当嫉妬してるじゃん」
「うっ……」
何もいえない。
本当のことだから。
ただの幼馴染みという分際で嫉妬なんて。
「芽郁、昔からそうじゃん。気が弱そうに見えて、中身は意外と頑固。めんどくさいやつだよ」
「あ、すみません」
「謝らないでよ。俺が学生いじめてるみたいに見えるじゃん。俺はそういう芽郁、嫌いじゃないぞ」
翔也さんはそう言いながら「そろそろ行くか」と席を立った。
俺も返事をして立ち上がる。
翔也さんのいう通り。
何をどうするなんて今考えたところで何もできない。
ただ、俺はこの先ずっと、ユズだけが好きだってことだけがあるだけだ。