キミが可愛いわけがない
「咲菜がね…」
軽くいつもの言い合いをしてから私は咲菜に言われた言葉を思い出す。
「私になりたいって言ったの」
「女子がブルドックみて可愛いっていうのと同じだろ」
「…頭凹むまで殴るよ。とにかく、咲菜ってお世辞とかいうタイプじゃないと思うんだ。言いたいこと結構ズバっていう子だし」
「それはわかる」
「可愛くて男子からも好かれてんだよ?なんで私になりたいって言うんだろうって。前にも似たようなこと言われたんだよね」
「……」
「咲菜ってさ…」
「腹減った」
突然、コンビニの前で足を止めると私のセリフを遮った芽郁が私の目をしっかり見てそう言った。
「はぁ?ちょっ、芽郁!…全く…」
芽郁は私の声を無視して、音を鳴らす自動ドアの中へと入って行った。