キミが可愛いわけがない
『────台風は、勢力を強めながら明日の午後にはかなり接近し、上陸する恐れがあります』
あれから3日。
若松とは口を聞いてないし、というか目を合わせてもそらされるし、何回か話しかけたけど完全に無視された。
ユズは俺が話を遮ってからなんだか大人しくなるし。
どう考えても全部、俺が悪いんだけどさ。
だからって…行動するってどうしたら…。
「芽郁、玄関の前にある鉢植え、学校行く前に家の中に入れといてね」
朝ごはんを食べていると、母さんが、テレビの天気予報を見ながらそう言った。
「あぁ」
台風…か。
台風と聞くと思い出す。
小学生の頃、怖いもの知らずだったユズが唯一嫌っていた、ヒューヒューとなる強い風の音。
あれだけはすごく嫌いだったみたいで、鼻水垂らしてブッサイクな泣き顔晒して窓に向かって怒鳴ってたユズ。
あの顔、思い出しただけで笑えてくる。